最高裁判所第三小法廷 昭和32年(オ)1218号 判決 1958年3月25日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人坂千秋の上告理由第一点について。
所論は、原判決が、投票当日の午前および午後、候補者加藤周一が判示のように投票所に滞留していたという事実を認定したことを非難し、理由不備、理由のくいちがいがあるというに帰する。しかし所論一の(1)ないし(5)において、また二の(1)および(2)において、上告人自身の観点よりきわめて詳細に主張する見解のうちには、首肯できる部分もないとはいえないが、原審が多面にわたり複雑な証拠調を行い、その専権に属する証拠の取捨判断によつて到達した事実認定は、全体としてこれを違法であり誤りであるとすることはできない。結局所論は、原審の事実認定と異なる独自の見解を主張するに帰し採用できない。
同第二点について。
所論は、原判決は公職選挙法二〇五条の解釈適用を誤つたと主張する。しかし原判決が認定した候補者加藤周一が判示のように、不必要に投票所内に滞留し、管理者が速に退去せしめなかつたという事実を前提とするときは、これを違法としこの違法は選挙の結果に異動を生ずるおそれがあるとした判断を誤りであるとするには足りない。したがつて所論のように原判決に法二〇五条の解釈適用を誤つた違法があるということはできない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己)